国際エネルギー機関(IEA)の最新研究によると、世界のデータセンターの電力需要は2030年までに倍増し、日本の総電力消費量を上回ると予想されています。その主な要因は人工知能(AI)です。IEAの報告書では、今後5年間で、データセンターが先進国の電力需要増加の20%以上を押し上げると予測されており、その大部分はAIの広範な活用によるものとされています。

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IEAの統計によると、2024年には、世界のデータセンター電力消費量の45%を米国が占めていました。2030年までにこの割合は大幅に上昇し、米国のデータセンターの電力消費量は、アルミニウム、鉄鋼、セメント、化学品などのエネルギー集約型製造業全体を上回ると予想されています。米国では、今後5年間の電力需要増加のほぼ半分をデータセンターが占める見込みです。

IEA事務局長のファティ・ビロル氏は、「AIの台頭により、エネルギー業界は現代において最も重要な技術革命の最前線に立っています」と述べています。報告書では、増加する需要を満たすために再生可能エネルギーの発電能力を増強する必要性も指摘されており、同時にAIがシステムを最適化し、排出量を削減できるという期待も込められています。

報告書では、AIは既にエネルギー業界で発電、送電、消費の改善、石油・ガス業界における探査と生産の最適化などに活用されているとされています。IEAは、AIの潜在的な利益を引き出すためには、政策と規制の転換が鍵となると考えています。一方で、AIが気候変動を悪化させるのではないかという懸念については、IEAは過大評価されていると考えています。

データセンターは最も急速に排出量が増加している発生源の一つですが、IEAの最悪の予測でも、エネルギー部門における排出量に占める割合は2035年までに1.5%未満にとどまるとされています。しかし、IEAはAIが気候変動問題を完全に解決できるとは期待していません。報告書では、既存のAIアプリケーションの広範な利用によって削減できる排出量は、世界のエネルギー関連排出量の約5%に過ぎず、気候変動対策としては不十分であると指摘しています。

注目すべきは、チップ製造に必要なエネルギー使用量とその排出問題も同様に重要であるということです。グリーンピースの報告書によると、世界のAIチップ製造の電力消費量は2023年から2024年にかけて350%以上急増し、2030年には2023年の170倍に達する可能性があり、この増加により、チップ製造の電力消費量はアイルランドの現在の電力消費量を上回ると予想されています。

東アジアでは、多くのチップメーカーが、増加するエネルギー需要を化石燃料で賄っており、グリーンピースは懸念を表明しています。IEAは、AIハードウェアの製造はエネルギー集約的であるものの、製品ライフサイクル全体では、運用段階での消費量よりもエネルギー消費量は少ないと指摘しています。これは、現在のチップ製造におけるエネルギー使用量の急増という傾向とは対照的です。

要点:

🌍 世界のデータセンターの電力需要は2030年までに倍増すると予想され、主な要因はAIです。

💡 米国のデータセンターは今後5年間で電力需要増加のほぼ半分を占める見込みです。

🔋 チップ製造の電力消費が急増しており、アイルランドの電力消費量を上回る可能性があります。