ベルリンを拠点とする音声AIスタートアップのSynthflow AIは、2000万ドル規模のAラウンドファイナンスを完了したことを発表しました。今回の資金調達は、有名なベンチャーキャピタル機関であるAccelが主導し、既存の投資家であるAtlantic LabsとSingularも参加しました。同社は企業向けにノーコードの音声AIカスタマーサービスソリューションを提供しており、対話型AI市場が急激に成長している今、注目を集めています。
市場の広がりと急速な成長
MarketsAndMarketsのデータによると、2022年11月にChatGPTが公開されて以降、対話型人工知能市場は爆発的な成長を遂げており、2031年には約500億ドル規模のグローバル産業になる見込みです。
Synthflowは2023年に設立され、わずか1年半で驚異的な成長を遂げました。現在では1000社以上の顧客をサポートしており、累計で4500万件以上の電話を処理しています。CEOのHakob Astabatsyan氏によると、会社は昨年15倍の成長を記録し、企業顧客の残存率は90%を超えています。また、昨年の月間電話処理数は100万〜200万件から現在では500万件に増加しています。
技術力と企業向けの強み
Synthflowのコア製品は、企業がカスタムの白標音声AIカスタマーサービスエージェントを構築・展開できるノーコードプラットフォームです。このプラットフォームには以下の主要な利点があります:
- コンプライアンス基準: HIPAAやGDPRなどの厳格なデータ保護規制に適合
- 幅広い統合: Salesforce、Twilio、HubSpotなど200以上の企業プラットフォームとの統合に対応
- 技術的課題: 音声AIのコア技術的課題を解決しており、400ミリ秒の遅延制御とリアルタイムの中断処理を実現
共同創業者兼CEOのHakob Astabatsyan氏は、「我々のチームは最初はテキストAIロボットから始まりましたが、音声技術の複雑さと可能性に気付き、音声AIに焦点を当てることにしました。『音声は本当に複雑で、AIが人間のようにリアルタイムで会話し、さまざまな中断に対処するというのは非常に難しい作業です。しかし、私たちはその挑戦に魅了されています。』」と語っています。
投資家が企業向け戦略を評価
AccelのパートナーであるLuca Bocchio氏は、Synthflowが初の製品を開発していた頃から注目していました。彼は特に、創業チームの実行力と、企業向けの統合に注力する戦略的な視点に注目しています。
「このチームは当初から、技術を通じてより深い価値を作り出すことにこだわっており、CRMや企業ツールの間に広範な統合を実現し、真正の企業向けコンプライアンスを提供することを目指していました」とBocchio氏は述べました。
厳しい競争が進む
市場は広がっているものの、対話型AI分野での競争はさらに激しくなっています。すでに多くの企業が大規模な資金調達を成功させているため、Bret Taylor氏が設立したSierra(2億8500万ドルの投資)やBland AI(5000万ドル以上を調達)などが代表例です。
これに対してAstabatsyan氏は自信を持っています。「私たちは製品と市場の適合性の後段階にいる状態であり、自分の顧客層や製品のロードマップ、そして今後3〜5年間の目標を明確に理解しています。」
資金の使い道と将来の計画
今回の資金調達は、チームの拡充、研究開発の強化、アメリカにおける初のオフィス開設に使われます。