細菌と抗生物質の間には、およそ1世紀にわたる「いたちごっこ」が続いてきました。残念ながら近年、細菌が優勢になりつつあります。世界保健機関(WHO)の報告によると、2019年には抗生物質耐性によって世界で127万人が死亡し、これは大きな公衆衛生上のリスクとなっています。
画像出典:AI生成画像、画像ライセンス提供元Midjourney
抗生物質耐性問題の深刻化に対し、新薬開発は遅々として進んでおらず、既存の候補薬は人体細胞に損傷を与え、深刻な副作用を引き起こす可能性があります。そこで、抗菌能力を維持しつつ、副作用を軽減できる方法はないのでしょうか?今月の研究で、研究者らは人工知能(AI)技術を用いて毒性のある抗生物質を再設計し、数千種類のバリエーションをスクリーニングすることで、細菌を殺菌し、かつヒト細胞を損傷しない新薬を発見しました。
今回の研究で使用されたAIは、GoogleやOpenAIなどの企業が開発したチャットボットと同様の大規模言語モデルです。このアルゴリズムは570万種類の抗生物質バリエーションを分析し、毒性が低く、それでも効果的な新薬を発見しました。実験によると、この新型バリエーションは細菌の「保護膜」を迅速に破壊する一方、宿主細胞には損傷を与えません。既存の抗生物質との比較実験では、新薬はヒト腎細胞に対する毒性が明らかに低く、感染マウスの実験では致死性の細菌を効果的に駆除しました。
テキサス大学ブライアン・デイビス博士率いる研究チームは、SLAYと呼ばれるシステムを用いて数万種類の抗生物質ペプチドをスクリーニングしました。最終的に、AIは彼らが選択性の高い新型抗生物質Protegrin-1.2を発見する手助けをしました。この新薬は実験において顕著な安全性を示し、ヒト赤血球にも無害でした。
今回の研究は主に抗生物質に焦点を当てていますが、チームは同様の方法を用いて他の薬剤の再設計にも取り組む予定です。技術の進歩に伴い、AIの医薬品開発分野への応用は大きな可能性を秘めています。
要点:
🌟2019年、抗生物質耐性により世界で127万人が死亡し、重大な公衆衛生上のリスクとなっています。
🔍 研究者らはAIを用いて抗生物質を再設計し、毒性が低い新型バリエーションProtegrin-1.2を開発しました。
💡 新薬はマウス実験でより強い殺菌能力とより少ない副作用を示し、将来的には他の薬剤開発にも応用できる可能性があります。